せかい地図更新中。

模範解答はいらない、自分の答えを導く方程式

恋とか愛とか。

 

今夜は月が見えない。

あの重く厚い雲の奥に

きっといるのだろうが、

月のない空はどこか不穏だ。

外灯の心許ない明かりが

寒空にぽつりぽつりと滲んでいる。

 

こんな夜は、後ろめたい関係の

カップルにとって都合が良いだろう。

お互いのギラギラした光だけが

絡み合って、夜が濃くなっていく。

 

 

 

不倫。たびたびワイドショーでも

話題になるが、明確な嫌悪感を

抱くことが出来ないでいる。

頭や心を超えたところに、

まるで雪崩のように押し寄せてきて

圧倒される可能性は誰しもある。

やめろ、という理性の声を一瞬聞いた

ような気もするが、もはや身動きできない。

それが結婚後に起こった場合、どういう

態度をとることが誠実なのだろう。

 

 

そもそも、結婚とは契約だ。

では、なんの?と聞かれると

ちょっと難しい。

ずっとあなただけを愛しますと誓い、

愛し続ける努力をお互いにしましょう

というところだろう。

では、愛するとはなにか。

まずは恋と愛の違いを考えてみよう。

 

恋は、相手を認めることだ。

私から見て、独占したいと感じるほど

魅力的だという認識から発する。

たいして愛は存在だ。

存在そのものは我々かたちあるものには

理解できないから、愛へ照射する線を

一般に愛と呼ぶ。それはつまり、

存在の肯定だ。魅力的な一側面を

評価するのではなく、在ること自体を

肯定することである。

そして、愛するという能動態になると

存在を認められるよう努めるという

意味合いになる。

相手が相手自身(部分的な承認ではなく

存在そのもの)を認められるように

努めるということだ。

 

だから、恋する気持ちが大きくなることを

愛と呼ぶのは違うし、恋が必ずしも愛に

発展するわけでもない。

目的地が違うのだ。

 

 

不倫は絶対的に恋だ。愛にはなれない。

相手に後ろめたさを背負わせるのは、

相手が相手自身を認める上で障害に

ならざるを得ないからだ。

一方、結婚は恋のままであるカップルも

多いが、愛に向かっていく可能性を

秘めている。障壁にぶつかり、

力をあわせて乗り越えていくなかで

ことばと出会うからだ。

ことばが豊かになり、見える世界が

奥行きを増す。

そうやって、愛に向かって線をひくことが

できるようになっていく。

 

 

と、割りきっていえばそれまでだが、

恋自体は悪いものではない。

突然圧倒されるものでも、じんわり

惹かれていくものでも。

いわば花のようなものだ。

時折心にぽっと咲く、芳しい花。

しかし、結婚という契約には

それを摘み取らないという約束が

含まれている。

花が咲くのを止めることはできないので、

咲いてしまったらただ眺めているだけ。

見方によっては苦い想いを味わうとも

いえる。

 

 

では、すでに摘み取ってしまったなら

どうすべきだろうか。

誰に、どのように、何を反省する?

恋は本能、愛は理性を重んじる。

故に本来同じルールで裁くことはできないの

だろうが、人間の意義という観点から

俯瞰してみることでヒントが見えてくる。

 

 

せかいを豊かにし、世界に還元することが

人間の意義だと考える。

それは好き嫌い、善悪を超えたところに

あるものだ。祈りの領域である。

たとえ興味がなくても知らんぷりすることは

できない。望まずとも、その基盤の上に

我々の生活はいとまなれているのだから。

恋よりも愛を選ぶべきである理由。

愛こそ生だから。

 

 

 

 

さよならと言われるよりも、

言う方が痛いこともある。

想った時間の半分は、ふいに涙が

こぼれるだろう。

ただ会いたい、体温を感じたい。

そういう本能的な願いは理性でぬぐえる

ものではないから、気がすむまで

そこにいていい。

大切なのは絶対に振り向かないこと。

 

身を裂かれるような想いを引き受けて

その選択をすることができたとき、

はじめて愛したのだ。

二度とまじわらない相手の未来を、

そして私の未来を尊重するということ。

そのために決断した事実は、

いずれ己を助ける。

ここぞというときに、凛と胸を張って

愛を選ぶことができる。

自分のことばで語ることができる。

 

 

恐らく、咲いた花の扱いに人間の器量が

あらわれる。その香りを纏いながら、

そして向けられた花束をにっこり笑って

かわす。それが色気だろう。

なにか起きてもおかしくないのに、

決して摘みとらない花。

いつも恋の芳しい香りを纏いながら、

愛を選ぶような女でいたいものです。